空前のキャンプブームでキャンピングカーにも注目が集まっています。一般社団法人日本RV協会の調査によると、2022年のキャンピングカーの新車・中古販売売上合計額が前年比20%増の762億円となり、過去最高を記録しました。
道の駅などを利用しながら車中泊を続ける人や、キャンピングカーで旅と仕事を同時に楽しむ人、ハイエースを宿泊仕様に改造するなど、従来の自動車を活用したライフスタイルに変化が生じています。
この記事では、キャンピングカーの基礎知識や活用方法を解説します。
キャンピングカーの種類
キャンピングカーには、大きく6つの種類があります。それぞれは目的が異なり、価格や維持費も大きく異なります。自分のライフスタイルに合ったものを選ぶのが重要です。
- フルコンバージョン
- キャブコンバージョン
- バスコンバージョン
- バンコンバージョン
- 軽キャンパー
- トラックキャンパー
フルコンバージョン
フルコンバージョンは、エンジンやフレームなど自動車のベースとなる部分は残し、後は居住スペースや生活機能を備えた設備へと改造したものです。
豪華な装備を整えたものが多く、ベッド、キッチン、トイレ、シャワールーム、TVなど居住性や娯楽が充実していることが最大の特徴です。
ホテルを思わせるような豪華な内装、トイレ、シャワールームを完備したものもあり、車内で快適な日々を過ごすことができます。
ベッドは広々としていることが多く、運転席の上などにも寝室を備えているものがあります。
車体は大きく、長さは6m以上のものがほとんどです。価格はどんなに安いものでも1,000万円はします。
家族や仲間などとともに、旅先で快適な日々を過ごしたいという人向けです。ノマドワーカーのように旅をしながら仕事をしたいという人にも向いているでしょう。
給排水タンクのメンテナンスや下水の処理、車内清掃が欠かせません。管理費や手間がかかります。キャンピングカーを生活の中心にする覚悟が必要な車です。
キャブコンバージョン
キャブコンバージョンは、運転席部分のみを残して、後は居住スペースなどへと変更したものです。キャンピングカーの王道とも言えるもので、運転席はトラックのような形で、その後ろがボックス型になっている車を目にしたことがあるはずです。
国内においては、トラックやハイエース、キャラバンなどをベースにしたものがよく見られます。
コンパクトな割に居住空間が高く、車内で立ち上がることもできます。家族4人であれば、車内で十分に就寝することができます。
簡単な手洗いなどを備えているものはありますが、トイレやシャワー室のような設備はないことがほとんどです。
2トントラックと同程度の大きさであることから、扱いやすい部類に入ります。駐車スペースもさほどとりません。コンビニなどに手軽に止めることができます。
ただし、燃費が悪く、大人数で乗ると思うようにスピードが出ません。手軽に乗れる一方で、生活の足になるような車ではないことに注意してください。
価格は500万円から1,000万円程度まで幅広くあります。家族などと週末は遠方のキャンプ場に赴き、大自然の中で過ごすといった使い方に向いています。キャブコンバージョンが一台あれば、テントなどの重い道具は必要ありません。
バスコンバージョン
バスコンバージョンは、マイクロバスなどをベースとし、生活に必要な設備を備えたキャンピングカーです。
トヨタのコースターや、日産のシベリアンなどがベース車として使われます。通常は26~29人乗りのバスですが、居住スペースを確保する目的で座席の多くは取り外します。10人以下に改造しているものも少なくありません。
気になる免許ですが、ほとんどのモデルが準中型免許の条件に収まります。2007年6月1日以前に普通自動車免許を取得している人は、そのままの免許証で運転することが可能です。
スペースが広く、大人数でも楽しめることが最大の特徴ですが、普通車に慣れている人は運転がしづらく、特別な駐車スペースも必要です。
価格は1,000万円程度はかかります。
フルコンバージョンほどの豪華な設備は必要なく、キャブコンバージョン以上の居住性が欲しいという人に向いています。
バンコンバージョン
バンコンバージョンは、ワンボックスタイプのバンやミニバン、ワゴン車を改造したもので、ベッドなどの必要なものを備えたキャンピングカーです。
ハイエースなどを改造したものが多く、誰でも簡単に運転できるのが最大の特徴です。改造する内容やベース車によって実現できる自由度が高く、キャンピングカーに盛り込みたい要素を肉付けすることができます。
キャブコンバージョンは安定性が低いという安全面での不安がありますが、外装がそのままのバンコンバージョンは安定した走りが実現します。燃費も比較的良いでしょう。
ただし、居住スペースが限られ、立ち上がることはできず、食事スペースを確保することができないことがあります。キャンプ道具を積み、食事は焚火を囲んで行い、眠るのは車内で、といった自由度の高いキャンプライフを送りたい人におすすめできます。
300万円程度で手に入れることができ、価格面でのメリットも高いでしょう。
軽キャンパー
軽キャンパーとは、軽トラックやバン、ワゴンなどをキャンピングカー仕様に改造したものです。バンコンバージョンの軽自動車タイプです。
スズキのエブリィやダイハツのハイゼットカーゴ、ホンダのN-BOXなどをベース車とします。
軽なので機動性が高く、燃費も良いために普段使いにも向いています。価格は200万円台から手に入り、手軽にキャンピングカーを体験できます。税金面でも有利です。
1~2名程度であれば問題なく使えますが、それ以上となると狭いと感じるでしょう。大人数での使用には向きません。車内が広くないため、設備にも限界があります。
ノマドワーカーで軽キャンパーに乗り、全国各地を周りながら仕事をしている人は多く見られます。特に独身のフリーランスがそのスタイルで車を使っており、自由度の高い暮らしをしたい人にはおすすめできます。
トラックキャンパー
トラックキャンパ―はキャブコンバージョンと少し似ていますが、ピックアップトラックの荷台部分に居住用キャンパーシェルを搭載しているという違いがあります。
最大の特徴は、キャンパーシェルの取り外しが可能なこと。普段はピックアップトラックとして使用し、旅に出る際はキャンペーシェルを装着するという使い方ができます。キャブコンバージョンにはそれができません。
ただし、このタイプは居住スペースと運転席の行き来ができず、搭乗者全員がシートに座って移動します。運転中に居住スペースを使うことは法律上できません。キャンパーシェルは荷物という扱いのためです。
自動車とキャンピングカーを切り分けて使いたいという人には、最適なタイプです。キャンパーシェル単体で、300万円程度から販売されています。
キャンピングカーとキャンピングトレーラーの違い
キャンピングカーとよく似たものに、キャンピングトレーラーがあります。2つの違いは自走できるかどうかで、トレーラーはその名の通り車がけん引します。
キャンピングトレーラーはエンジンなどの複雑な機材がないため、価格が抑えられるという特徴があります。キャブコンバージョンタイプと同等の設備を備えたトレーラーであれば、200万円程度から手に入れることができるでしょう。
トレーラーにも車検、税金、自賠責保険が必要ですが、キャンピングカーと比較するとどれも手軽で安い傾向にあります。
居住スペースが広いなどのメリットがある一方で、難易度の高い運転技術が求められます。バックはハンドル操作が逆になるなど、知識がなければ乗れません。また、トレーラー部分に人を乗せて運転することは禁止されています。
トレーラーの車両重量が750kg以上になると、けん引免許が必要になります。普通免許で取り付けられるキャンピングトレーラーは数多く販売されています。
キャンピングカーの選び方
キャンピングカーは種類が多いため、目的をしっかり持たないと使いこなすことができずに終わってしまいます。
何となく流行っているからキャブコンバージョンタイプを購入したものの、想像していたよりも利用シーンがなく、維持費や燃費が高いためにすぐに手放した、という人も少なくありません。
例えば、家族4人で週末は必ずキャンプに行き、東京から北海道や九州など遠方に足を向けることも多いのであれば、バンコンバージョンタイプがおすすめです。
このタイプは居住性が比較的高く、取り回しがしやすいという特徴があります。燃費も良いため、遠方への旅行も安心です。コンビニやドラッグストア、スーパーなどの駐車場にも簡単に止められます。
キャンピングカーでどのような生活をしたいのか、何が目的なのかを今一度考えてから購入に踏み切ってください。
キャンピングカーの活用方法
キャンピングカーがある生活の一部を紹介します。
アウトドアのベース基地
最もポピュラーな使い方の一つです。海水浴やバーベキュー、釣りなどのベース基地として使います。
キャンピングカーは車体とタープを繋げられる仕様になっているものが多く、その下にテーブルや椅子などを並べることで休憩所を作ることができます。
子供たちが外で遊んでいる間、大人はテーブルで食事やお酒、トランプなどのゲームをして過ごすことができます。
キャンプ場での利用
テントやタープ、テーブルなどのキャンプ道具は重く、設営するのも一苦労です。テントは雨や露を払うために撤収後はベランダに干すこともよくあります。それを面倒だと感じる人は多いでしょう。
キャンピングカーは自然の中で寝る場所を確保でき、設営や後片付けの手間を最小限にできます。キャンプ場での利用は利便性が高いでしょう。
オフィスとしての活用
キャンピングカーの屋根にソーラーパネルを設置し、電気を供給できる仕様にしている人も少なくありません。天気がよければ、パソコンやスマートフォンの日中の充電は十分にできます。
自宅やオフィスなどの決まった場所で仕事をすると、飽きてしまうこともあります。旅をしながら仕事をすれば、刺激の多い日々を送ることができるでしょう。
渋滞の回避
週末や連休の移動で避けられないのが渋滞。コロナ禍の反動と、アウトドアブームが重なって、高速道路の渋滞が目立つようになりました。
キャンピングカーはパーキングエリアや道の駅が、十分な休憩スペースになります。その場で眠ることができるので、遠方に行く際は前乗りする計画も立てやすくなるでしょう。
オーナー同士の交流
キャンピングカーオーナー同士の交流は活発で、SNSなどでも頻繁に情報交換が行われています。オフ会イベントなども開催されており、直接会う機会も設けられています。
キャンピングカーは日々進化しており、思いもよらない改造をしている人がいます。そうした人々と交流することで、車に対するモチベーションを高めることができます。
耐用年数はどれくらい?
新車を購入した場合の耐用年数は6年です。
キャンピングカーを購入して減価償却費を計上し、節税に役立てる方法もあります。ただし、キャンピングカーを仕事で使用する目的や、活用方法を明確にしなければなりません。
キャンピングカーの維持費は?
税金や車検、保険については通常の自動車とさほどの違いはなく、税制面ではむしろ優遇されています。
一番のポイントは燃費です。2トントラックの燃費は11km/lが平均的な水準ですが、同じベース車のキャブコンバージョンは7km/lほどになるケースもあります。
キャンピングカーがある生活を手にしよう!
キャンピングカーは生活の自由度が高められ、子供とともに自然に触れあう時間を増やすことができます。刺激的な毎日を送ることができるでしょう。仕事を引退した人がキャンピングカーを手にし、全国を旅して周るという使い方もできます。
独身の人でも、仕事場所などとしてキャンピングカーを所有するケースがあり、様々なライフスタイルを実現できます。